【スキー場運営戦略】時代の変化に対応する集客とリゾート再生の展望 MEリゾート但馬 代表取締役 一ノ本智毅氏

2025.10.29

グループ全体で国内最大規模のスキー場運営を手がける株式会社MEリゾート但馬 代表取締役の一ノ本智毅様にスキー場運営戦略について伺いました。

■株式会社MEリゾート但馬のご紹介

株式会社MEリゾート但馬は、「持続可能な中山間地域を創造する」を使命とし、兵庫県北部を中心に、宿泊施設、スノーリゾート、ゴルフ場、キャンプ場などのリゾート施設を運営。

MEリゾート但馬単体の会社としては、現在3箇所のスキー場を運営。

グループ全体で見ると「高鷲スノーパーク」や「ダイナランド」など合計15箇所のスキー場運営を手掛ける。日本国内でも有数の規模で事業を展開中。

■顧客に喜ばれているサービスを教えてください

スキー場運営において、お客様に喜ばれているサービスは、単にコースの質や雪質だけではないことを強く感じています。スキー・スノーボード人口全体を考えると、コースにこだわる層は、ピラミッドの頂点にいる一部のお客様(約2割)だけであり、大多数(約8割)のお客様は、レンタルや施設(特にトイレ)、食事といったコース以外の要素でスキー場を選んでいる傾向が強い、と見ています。

特に、「レンタルが借りやすい」「レンタルが綺麗でおしゃれである」ということや、「トイレを含めた施設全体が綺麗である」ことは、お客様の満足度を高める上で非常に重要だと考えています。

例えば、コースの長さや雪質よりも、お風呂や食事といったコース外の設備をアピールする方が反響が良いというデータがあります。

実際に峰山高原リゾートでは、ラーメン店とのコラボレーションなど、食事の質向上にも力を入れています。

■他社との差別化ポイントについて教えてください

競争が激しいスキー場業界において、私たちMEリゾート但馬および関連施設は、いくつかの点で他社との差別化を図っています。

最も特徴的な差別化戦略の一つが、マックアースジャパンのシーズン券です。これは、グループおよび提携する合計20箇所ものスキー場を利用できるという、日本ではおそらく他に類を見ない取り組みだと自負しています。このシーズン券の目的は、単にお客様に一つのスキー場や地域に通ってもらうことだけでなく、様々なスキー場を巡ってもらい、より多くの地域に経済効果を波及させることです。

また、個別のスキー場運営においては、厳しいキャッシュフローの中で、大規模な設備投資が難しい場合でも、マーケティング手法の工夫や、施設の見た目を少し綺麗にするといった努力で集客力の強化を図っています。

Webマーケティングにおいては、単にスキー場名を出すだけでなく、「無料」「インターチェンジから何分」「アクセス最強」といった分かりやすいキャッチコピーや、前述のコース以外の設備(風呂、食事など)を訴求する広告の打ち方が効果的であり、他施設との差別化に繋がっていると感じています。Web広告のコンバージョンを「アクセスページの閲覧」に設定するなど、来場意欲の高いお客様に焦点を当てた工夫も行っています。

さらに、関西のスキー場に不足しがちな宿泊施設をグループで持つことは、平日の集客を伸ばす上で非常に重要な差別化要素となり得ると考えています。グループ施設のダイナランドにはホテルがあり、スキーシーズン中は9割と高い稼働率を誇っています。

インバウンド集客においても差別化を図っています。北海道や長野以外のエリアではまだ海外での認知度が低い現状を踏まえ、高鷲スノーパークやダイナランドでは、郡上市などと連携し、オーストラリアやアジア(台湾、タイなど)へ積極的に現地代理店へのセールス活動を行い、誘客依頼をしています。中部国際空港(セントレア)からのアクセスを活かし、高山や白川郷といった周辺観光資源と組み合わせた新たなインバウンドルートの可能性も探っています。特に、雪質にそれほどこだわらないアジア圏のお客様をターゲットとする戦略は、差別化のポイントとなり得ると考えています。

■グリーンシーズンにおいて注力しているサービス

スキー場の夏利用については、そのスキー場のポテンシャル(景色、標高、アクセスなど)によって方法は変わってきます。

夏営業はせず、最低限の人員だけ残し、他の人員はスキー場近くのグループ内施設(ホテルやゴルフ場)に出向させた方が良いスキー場もあります。

景色(花も含め)とアクティビティ、キャンプ場と活用方法は様々かと思います。

・景色                         :当日利用人数に上限なし

・アクティビティ       :ものによっては当日利用人数に上限あり

・キャンプ場              :当日利用人数に上限あり

となりますので大きな売上を狙いに行くのであれば景色を商品化した売り方がいいです。ただし、景色に関しては、本当にロケーション次第なので商売になるスキー場は限られます。

■今後の展開について教えてください

日本のスキー場業界は、国内人口の減少という構造的な課題に直面しており、今後の展開には変革が求められています。

最も重要な方向性の一つは、インバウンド集客の強化です。特に奥美濃エリアでは、インバウンドを年間通して呼び込むことを視野に入れ、オールシーズンリゾートとしての開発を目指しています。ホテル事業者を誘致し、リゾート全体で集客を図る構想があり、自社所有地を活用した開発にも期待がかかっています。インバウンドを取り込める立地、あるいは大都市圏からのアクセスが良いスキー場が、今後競争力を維持できる可能性が高いと考えています。

国内需要への対応としては、小規模なスキー場で、たとえ年間来場者数が3万人規模であっても、すぐに運営を終えるのではなく、働く人々の雇用の場としての役割を終えるまでは、可能な限り運営を続けたいという意向があります。ただし、過疎化が進み、派遣社員を都会から大量に呼ばないと運営できないような状況になれば、何のためにやっているのか分からなくなるため、その時は潮時かもしれません。需要があればもちろん続けます。

また、長期的な視点での差別化要素として、宿泊施設の拡充が挙げられます。これにより、平日と土日の来場者数の差を縮め、平日の集客を安定させることが期待できます。

人材確保も重要な課題です。特に山間部の遠隔地では採用が難しい現状があり、新卒採用への投資や、従業員が安心してキャリアを築けるような人事制度・教育システムの構築に力を入れています。中小企業でも大企業のようにステップが見えるような仕組みを取り入れないと、人は定着しないと考えています。地方創生という大きな文脈において、リゾート事業は外部からの需要を取り込む数少ない手段であり、その持続には雇用の維持・創出が不可欠です。

ゴルフ事業についても、スキー場運営との連携が重要です。雪で閉鎖する冬期のゴルフ場の従業員はスキー場に異動させることで、年間の雇用を確保し、冬期赤字を人件費調整でカバーしています。

■最後に

MEリゾート但馬およびマックアースグループは、厳しい経営環境の中においても、Web マーケティングやターゲット層の明確化といった短期的な集客施策に取り組む一方で、グループの強みを活かしたシーズン券の導入や、インバウンド需要を見据えたリゾート開発など、中長期的な戦略も展開しています。こうした取り組みは、人口減少が進む日本において、外部からの需要を呼び込む数少ない手段である観光業、特にスキー場やゴルフ場が果たすべき重要な役割であると考えています。今後も行政との連携を図りながら、地域にとってスキー場が果たす機能を見極め、持続可能な形で地域とともに歩んでいきたいと考えています。

■株式会社MEリゾート但馬公式HP

https://me-resort.com

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